あけましておめでとうございます。
正月早々、早速ですが、はじめましょう。
「対比」の問題
問題を引用します。
(D) ―――線部(2)について。「僕」はなぜ、『科学者と詩人』を読んだときポアンカレーがちっともおもしろくないと感じたのか。その説明として最も適当なもの一つを、次記各項の中から選び、番号で答えよ。
「ポアンカレーがちっともおもしろくないと感じた」理由は何か?これが問題の求めていることです。
そして、ここのところの対応が、この問題の最も重要なところになります。
既に対比を抑えているのならば、
「ポアンカレーが面白くない」=「ソスノウスキーが面白い」と変換できるはずです。
もし対比を抑えていなければ……課題文をさすらうことになるのでしょう。
前々回扱った対比をもう一度とり出してみましょう
・ポアンカレー……面白くない……(下記の反対)
・ソスノウスキー…面白い…………文字通り哀悼の言葉、素朴、中味がつまっている、身を打ち込んでいる
この図式を用いるならば、ポアンカレーが面白くない理由は、ポアンカレーが「文字通り(の)哀悼の言葉ではない、素朴ではない、中味がつまっていない、身を打ち込んでいない」から、ということになります。
あとはこのラインにそって、選択肢を確認していけばよいわけです。
選択肢は以下のとおりです。
1 すでに学問上の権威と化したポアンカレーが、自分の論敵を褒めたたえることで、逆に自らの地位を高めようとしているように感じられたから。
2 生前は学問上のライバルであったはずの科学者が亡くなったとたんに、態度を豹変させて褒めそやすポアンカレーのしたたかさが透けてみえたから。
3 亡くなった人に対して、どのような言葉で哀悼の意を表すれば周囲が納得するかを知悉(ちしつ)しているポアンカレーの態度が傲慢に感じられたから。
4 亡くなった人間の存在性よりも、残された自分がどれほど大きな損失を感じているかを強調するポアンカレーの計算高さが鼻についたから。
5 自分は少しも心を乱すことなく、亡くなった論敵を上手に褒めたたえるポアンカレーのもの言いが、緊張感に欠けているように思えたから。
主文をとり出してみましょう。
1 ポアンカレーが、逆に自らの地位を高めようとしているように感じられたから。
2 ポアンカレーのしたたかさが透けてみえたから。
3 ポアンカレーの態度が傲慢に感じられたから。
4 ポアンカレーの計算高さが鼻についたから。
5 ポアンカレーのもの言いが、緊張感に欠けているように思えたから。
「文字通り(の)哀悼の言葉ではない、素朴ではない、中味がつまっていない、身を打ち込んでいない」とは
1 自らの地位を高めようとしていること
2 したたかさが透けてみえること
3 傲慢であること
4 計算高いこと
5 緊張感に欠けていること
のうちのどれに該当するかを考えればいいわけです。
解答はもちろん、5ですね。
そして残りの部分を確認して、最終決断すれば完了です。
5 自分は少しも心を乱すことなく、亡くなった論敵を上手に褒めたたえるポアンカレーのもの言いが、緊張感に欠けているように思えたから。
「自分は少しも心を乱すことなく、亡くなった論敵を上手に褒めたたえる」は「文字通り(の)哀悼の言葉ではない」の言い換えであることは、言うまでもないでしょう。解答はあきらかに、5です。
対比は段落を越える(センターとの比較)
センター試験は段落を中心に考えることがポイントであることは、以前にお話したことと思います。
ところが、今回は段落を全く扱うことなく、対比のみで問題を解きました。
問題を解く際には「段落」を中心にしたほうがいいのでしょうか?
それとも「段落」はほどほどにしておいたほうがいいのでしょうか?
私なりの見解を以下に述べておきます。
私は、この問題に対する普遍的な解答は、おそらく存在しないと考えています。
問題によっては段落を中心に考えた方がいいものもあれば、そうじゃないものもあります。
それは問題を解いて始めて理解されることでもあります。
つまり、問題を解く以前に、その問題がどちらのタイプに属するかを判断するのは困難だということです。
ではどうすればいいのか。
対応方法は2つです。
1つ目は、過去問を研究することによって、最初から該当大学の問題のタイプを判別しておく方法です。
対比や段落に注目しながら、問題を「調査(単に解くというのではなく))していけば、その大学の問題が、どちらの方に偏っているか、理解できるはずです。その調査結果を念頭において、本番に臨むのです。
2つ目は、それでも段落を中心に考えることを「最も基本的なパターン」としておくことです。
それは(結果として)センター試験で採用されている方法だからです。
あくまで経験による確率論なのですが、段落を中心に考えるセンター型のあり方の方が本番では有効のように思えますし、なにより方法論を単純化しておくのは、思考のブレをとるために有効な方法だからでもあります。
そしてその上で、時々段落を飛び越える時がある、と認識しておくのです。
段落を飛び越えるか否か、ここも判断の必要があります。
わからないから、といって周辺をウロウロと眺めていても、正解へはたどりつかないことでしょう。
段落を飛び越えるには、それなりの条件が必要です。
1つは、今回のような対比の場合。この場合は段落を飛び越えます。
もう1つは、キーワード。これはいずれお話しましょう。
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