昨日、本文の分析した割に、今日はわりと本文とは関係のない話です。
でも、絶対に覚えておくべき事項なので、しっかり暗記してください。
暗記しとくほかない事項
私は、句法を丸暗記することで受験に対応する、という考え方にやや懐疑的です。
でもやっぱり暗記しとくほかない、という事項も存在します。
その代表例が、今日取り上げる問題のひとつ、再読文字です
問1 傍線部(1)「未 幾」・(2)「交」の意味として最も適当なものを、次の各群の①~⑤のうちから、それぞれ一つずつ選べ。
再読文字はセンター試験の定番中の定番です。
これは絶対に暗記しておかなければいけません。
再読文字をあげておくと、未・将・当・(応)・須・宜、あたりがメインでしょう。
たったこれだけです。
しかも、登場のしかたも偏っていて、頻出は未・将・当の3つです。
たった3つです。なのに、間違える人がすくなくありません。
ど忘れなどといったことがないように、再読文字は上記3つを中心に、しっかり暗記してください。
そのうち、今回は「未(いまだ〜ず)」です。訳は「まだ〜ない」です。
問題を見てみましょう。
(1) 「未幾」
①突然に ②思いがけず ③おもむろに ④たえず ⑤まもなく
「幾」は「いくばく」と読みます。意味は「いくつ?」です。
よって「未幾」は「まだいくつもない」ということなのですが、この場合は時間を示したものと考え、解答は⑤です。
もっとも読まなくても、大体でいえば⑤だろうな、と推測することもできます。
課題文を確認してみましょう。
東坡元豊間繋御史獄、謫黄州。元祐初、起知登州、未幾、以礼部員外郎。
東坡元豊の間に、御史の獄に繋がれ、黄州に謫せらる。元祐の初、起こされて登州に知たり、未幾、礼部員外郎を以て召さる。
この文は、前半で追放処分にあったこと、後半で出世したことが述べられていることは、前に説明しました。
要するに、対比になっているわけです。
そして「未幾」は後半部で使われている言葉です。
登州の知事になる→礼部員外郎になる。この→の部分が「未幾」に相当します。
では、ここに何が入るか?
対比ですから、あまり強い意味の言葉は入りません。
①突然に、だったら、前半部にも似たような言葉か、正反対の言葉(ゆっくり、など)が入るはずです。
でも、そんな言葉は前半には見受けられません。
よって、①はダメ。
こうやって選択肢を潰していくと、「そして」のニュアンスに最も近い、⑤まもなく、が選ばれるわけです。
こういうやり方もありますが、やはりここは正確に暗記しておいてほしいところです。
次にいきましょう。
連文と文脈
問題です。
(2) 「交」
①向かいあって ②かわるがわる ③立て続けに ④手を替え品を替え ⑤あべこべに
漢字1文字が問われるときは、二字句にして考えます。
「交」なら、「交通」「交流」「交差」などですね。
ここから漢字の意味を考えます。この場合ですと、訓読みにもなっている「まじわる」の意味です。
それから、本文の確認をします。
冥官大怒、詰之曰『蛇黄・牛黄皆入薬、天下所共知。汝為人、何黄之有。』左右交訊、其人窘甚曰『某別無黄。但有些慚惶。』」
冥官大いに怒り、之を詰りて曰はく『蛇黄・牛黄皆な薬に入ること、天下の共に知る所なり。汝為人、何黄之有。』左右交訊ふに、其の人窘(くる)しむこと甚だしくして曰はく『某に別に黄無し。但だ些(いささ)かの慚惶有り。』と」
短く取り出してみますと、「左右交訊」となっています。
訓読より、「左右」が主語(主語の場合は「は」「が」などの助詞が付かない場合が多い)、同じく訓読により「訊」は動詞(述語)、もう少し考えれば「訊問」という言葉を思い出せれば、「訊」の意味は「問」であることがわかります(これは連文と呼ばれる技法です)。
実際の問題では「訊」に「とフニ」とありますので、ここから「問ふ」を導き出すのもいいでしょう。
さて状況をみてみますと、まず冥官が怒っています。そして何やらうにゃうにゃ言って、それから左右が質問する。
その人はとても苦しんで云々をなっています。
「交」はこの左右が質問するときのあり方を説明する修飾語なわけです。
以上を強引にまとめると、「左右交訊」とは「左右がまじわって質問する」となります。
これはどういう意味でしょうか?
この場合の「まじわる」は、「交代」の意味ですね。
左右(冥官の左右、ということでしょうから、左右の人、と考えられます)が交代で質問した、といっているのです。
解答は②かわるがわる、です。
この問題は二字句のところで「交代」と出てきたなら、あとはすんなりやっていけると思います。
でも、もし思い出せなければ、ある程度のところで中断し、本文の確認に入り、それをヒントにもう一度考えた方がよいでしょう。
思い出せそうで思い出せない、というのは、時間を大幅にロスしますから。
連文とは?
漢字を二字句にして考えるのは、連文と呼ばれる技術を使いたいからです。
小学校のときでしょうか、漢字二字句のあり方について、学んだ事があると思います。
簡単に復習しておきますと、
・上下が反対になっている(白黒など)
・修飾ー被修飾になっている(食事など)
こういったモノの中に、「上下が同じ意味のもの」というのがあったと思います。
これが「連文」です。上下が同じ意味の二字句を称して「連文」というのです。
二字句が連文になっているということは、上下が同じ意味を有している、ということでもあります。
これを応用すれば、意味がよくわからなくても「連文」を作り出すことで、その漢字の意味を明確にすることができる、ということでもあります。
「訊」を考えたとき、「訊問」を通じて「訊」の意味は「問ふ」であることを指摘しました。
このように、連文は難しげな漢字を、簡単な漢字に置き換え、意味を明確にする技法なのです。
二字句が連文がどうか判断する方法は、そんなに難しいことではありません。
身もふたもない言い方をすると、大抵の場合、慣れさえすればすぐに見分けることができます。
でもそれでは……という人のために、ヒントをいっておくと、二字句にしてみて、二字句の意味と、加えられた文字の意味とが合致すれば、連文です。
「訊問」でいえば、「訊問」という言葉は「質問する」の意味です。「問」の意味も「質問する」です。
よって「訊問」は連文と判断されるのです。
余談ながら追加しておけば、ここで「訊」と「質」とが結びつくことになります。
「問いただす」は「問い質す」ともかきますが、ここから「本当にそれでいいのか?」と強く確認を求める意味があります。ここから「訊」にも同様のニュアンスがあることが推測されます。
連文は慣れると非常に便利なテクニックです。
是非とも修得して、活用してください。
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