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今日の国語

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平成17年本試評論 問6

  今日でこの問題は終了です。
 最後に扱う問6ですが、苦手としている人が多いところでもあります。
 気持ちはわかります。一体どこを見ればいいのか、よくわからないのですから。
 挙げ句の果てには、時間がない中で、全部をもう一回見直さなければならない。しかも、問6は点数が高いところでもある。落とすと痛い。
 プレッシャーがかかりますね。
 
 プレッシャーのかかる問6をどうクリアするか。問6のあり方を考えることから始めましょう。
 
 
問6とは?                                
 
 評論は問1が漢字問題、問2から内容読解問題に入ります。
 これを細かく分けて考えてみると、問2〜問5までが部分問題、問6は総合問題(全体問題)といってよいでしょう。
 
 ここでちょっと考えてみてください。
 
 問2〜問5までが部分問題で、この4題がひろく全体をカバーする形になっています。
 ということは、課題文はこの段階で使い尽くされている、ということになりますね。
 課題文は消費されてしまっていて、ベストな問題は(とりあえず)出尽くしている、ということです。
 
 ということは……問6の入る余地などないはずです。
 ただ1つの方法を除いては。
 
 そのただ1つの方法とは、「繰り返し」です。
 問2〜問5を繰り返してやればいい。
 もちろん、そのままで繰り返すことはしません。ここに工夫がいるのは間違いありません
 でも、基本コンセプトとして、問2〜問5のあり方をベースにすれば、総合問題ができることになります。
 
 これが問6です。
 
 さらにこの考え方を敷衍してやると……
 
  ・問6は問2〜問5の繰り返しなのだから、国語の苦手な人は、まず問2〜問5の理解から着手すべきである。
  ・表現のあり方などが求められることがあるが、それは表面上のことにすぎない。本質は上記のとおり。
 
 となりますね。
 
 ここからは具体的に見ていきましょう。
 
 
対比の確認、問題の確認                          
 
 課題文は対比により成立していました。もう一度まとめてみましょう。
 
  ・絵画……見る………………時間に依存しない……内面との対話可能
  ・映画……見ることの死……時間に依存する………内面との対話不可能
 
 相変わらず大雑把ですが、あとは必要に応じて細かくしていけばOKでしょう。
 確認が済んだところで、問題の確認に入りましょう。
 
   問6 本文の内容に最もよく合致するものを、次の①~⑤のうちからひとつ選べ。
 
 ありがちな問題ですね。特にコメントは必要ないでしょう。
 あえていえば、「最もよく合致するもの」とは、「正解は複数の場合があるけど、それでもよく考えれば、1つにしぼりこめるよ」ということです。
 
 
選択肢の確認                               
 
①ひとつの意味を強調するという性質ゆえ、映画は国家権力やコマーシャリズムに悪用されるに至ったが、そのような事態に対して、小津安二郎の映画は、戯れや諧謔に満ちた自由な筋立てによって抵抗している。
 
②長大な時間の中で起こるできごとを二時間程度で表現できる点で、映画は日常的な時間の制約から自由な芸術であるが、小津安二郎の映画は、そのような自由を否定し、現実の時間の流れに従うように作られている。
 
③絵画や写真を鑑賞する場合と比べれば明らかなように、映画は観客の眼の運動を制限してただひとつの筋立てに従わせようとするが、小津安二郎の映画は、そのような制限を取払い、筋立てが複数化されている。
 
④カメラのレンズと比べて自由であるはずの眼の運動を制限することによって、映画は観客に特定の視点を強制するが、小津安二郎の映画は、そのような強制をまぬがれた見方を観客ができるように作られている。
 
⑤一方通行に早い速度で流れる時間を強いることで、映画は観客を独占的に支配するという一般的性質を持っているが、小津安二郎の映画は、そのような特質を徹底することで、かえって映画の限界を突破している。
 
 
 どの選択肢も「……だが、……だ」という構造をとっています。重文構造です。
 いつものように、主文の確認をします。
 
①小津安二郎の映画は、戯れや諧謔に満ちた自由な筋立てによって抵抗している。
 
②小津安二郎の映画は、そのような自由を否定し、現実の時間の流れに従うように作られている。
 
③小津安二郎の映画は、そのような制限を取払い、筋立てが複数化されている。
 
④小津安二郎の映画は、そのような強制をまぬがれた見方を観客ができるように作られている。
 
⑤小津安二郎の映画は、そのような特質を徹底することで、かえって映画の限界を突破している。
 
 何なんでしょう、これ?
 これだけでも正解は④しかないことが理解されると思いますが、いかがでしょうか?
 一応、確認しておきます。
 
①は「戯れや諧謔に満ちた自由な筋立て」なんて、対比構造には一切登場しません。①では「自由な筋立て」の対比として「国家権力やコマーシャリズムに悪用されるに至った」とあり、〔戯れ・諧謔・自由な筋立てー国家権力・コマーシャリズム〕の対比を打ち出していますが、こんな対比は本文には登場していません。
 
②「現実の時間の流れに従う」が正しければ、絵画もまた「現実の時間の流れに従う」ことになります。絵画に時間は存在しません。
 
③「筋立てが複数化されている」とはどういうことなんでしょう?絵画に複数の筋立てがあるというのでしょうか?
 
⑤「そのような特質(=一方通行に早い速度で流れる時間を強いることで、映画は観客を独占的に支配する)を徹底する」のならば、小津さんは映画の性質をつきつめたということであって、絵画の出る幕はなくなってしまいます。ダメ。
 
 
 これで問題は終了です。
 本来ならば、これで終わりなのですが、今回は問6の性質を確認する仕事が残っています。
 選択肢のあり方を検討してみましょう。
 
①ひとつの意味を強調するという性質ゆえ、映画は国家権力やコマーシャリズムに悪用されるに至ったが、そのような事態に対して、小津安二郎の映画は、戯れや諧謔に満ちた自由な筋立てによって抵抗している。
 →前半部の「ひとつの意味を〜至ったが」は問4。後半部は対比をねじまげた出題者のオリジナルです。
 
 
②長大な時間の中で起こるできごとを二時間程度で表現できる点で、映画は日常的な時間の制約から自由な芸術であるが、小津安二郎の映画は、そのような自由を否定し、現実の時間の流れに従うように作られている。
 →前半部「長大な〜芸術であるが」は問4。後半はオリジナル。
 
 
③絵画や写真を鑑賞する場合と比べれば明らかなように、映画は観客の眼の運動を制限してただひとつの筋立てに従わせようとするが、小津安二郎の映画は、そのような制限を取払い、筋立てが複数化されている。
 →前半部「絵画や〜とするが」は問4、問5。後半はオリジナル。
 
 
④カメラのレンズと比べて自由であるはずの眼の運動を制限することによって、映画は観客に特定の視点を強制するが、小津安二郎の映画は、そのような強制をまぬがれた見方を観客ができるように作られている。
 →前半部「カメラのレンズ〜強制するが」は問4、問5。後半部は対比より導き出された結論(絵画側のあり方を提示している)。
 
⑤一方通行に早い速度で流れる時間を強いることで、映画は観客を独占的に支配するという一般的性質を持っているが、小津安二郎の映画は、そのような特質を徹底することで、かえって映画の限界を突破している。
 →前半部「一方通行〜持っているが」は問4。後半部はオリジナル。
 

 今回の場合は、問4を中心に組まれていることがわかると思います。
 
 ついでに推測しておきましょう。
 この問6は、いずれも主文は「小津安二郎」でした。もう少し言えば、「小津安二郎の映画の特質」です。
 課題文は大半が小津安二郎とは関係のないところで論が展開された(絵画・写真と映画との対比です)ため、課題文が小津安二郎に関する評論だったのに、小津安二郎がほとんど登場しないこととなりました。
 そこで最後に、小津安二郎を組み込んだ問題を作りたい、と出題者は思ったのではないでしょうか。
 
 小津安二郎の映画の特質を問題に組み込もうとすれば、必然的に映画の一般的特質に言及せざるをえません。
 映画の一般的特質に言及した問題は問4です。
 これが問4が従文に登場する理由ではないでしょうか。
 
 そしてさらに、問題を作成するとき、〔絵画・写真ー映画〕の対比自体に細工をすれば、問題が難しくなりすぎる。
 対比の存在に気がつかず、その場限りの読解で何とかしている受験生に対して、絵画の話を持ちだせば、彼らの理解の範疇を越えてしまう。あるいは、時間がかかりすぎる。
 そのため、細工をするとすれば、主に小津安二郎の方にならざるを得ない。
 小津安二郎の方ならば、最後の段落にまとめられているし、映画の一般的特質も、小津安二郎の登場の直前に書いてある。
 確認範囲が比較的狭くなる。
 
 おそらくはこうした思考が働いたのではないでしょうか。
 
 もちろん、推測ですがね。
 
 さて、今回はここで終了しましょう。
 お疲れさまでした。
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