忍者ブログ

今日の国語

シンプルに

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

芥川⑦(未然形+ば)

調べものしてたら、更新する時間がなくなってしまいました……。
今日も調べものの真っ最中。まだ途中なので書くに書けないのですが、途中経過ということで、少しは書いておきましょう(笑)
 
芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、
「かれは何ぞ」
 となむ男に問ひける。
 
 調べていたのは、「行きければ」の「」。これが奥が深い!!
 簡単に説明しておきますと「ば」の用法は2つです。
 「未然形+ば」と「已然形+ば」ですね。

 
 「未然形+ば」は仮定条件と呼ばれ、「(まだそうじゃないんだけど、もしそう)ならば」という具合に訳します。
 「具合に」なんて曖昧な表現をしているのは、場合に応じて言葉を選ぶ必要があるからですね。
 で、用例ですが、これにはまってしまいました。並べてみましょう。
 
①悪人のまねとて人を殺さば、悪人なり(徒然草85)
  →悪人のまねだといって人を殺すならば、(それは)悪人である。
(以上、数研出版「体系古典文法」)
②宮仕へに出だし立てば、死ぬべし。(竹取物語)
  →宮仕えに出すならば、死ぬつもりだ。
(以上 尚文出版「これからの古典文法」) 
③折りとらば惜しげにもあるか桜花いざやど借りて散るまでは見ん(古今/春上)
  →もし折取ったらいかにも惜しいなあ。桜の花をさあ宿をとって散るまでみよう。
④都にあるならば、またうきめをもみむずらん(平家1・祇王)
  →こうして都にいたら、またつらいめをもみるだろう
(以上 文英堂「全解古語辞典」)
⑤ただ今、行方なく飛び失せなば、いかが思ふべき(更級日記・大納言殿の姫君)
  →たった今、(私が)行く先も知れず飛んでいなくなってしまったら、(あなたは)どう思うつもりなのか
⑥道長が家より帝、后立ちたまふべきものならば、この矢当たれ(大鏡・道長上)
  →(この私)道長の家から天皇や、皇后の位にお就きになる(人物が出る)はずのものであるならば、この矢が命中しろ
以上「ベネッセ全訳古語辞典」
 
 いや、でるわでるわ、何が面白いって、辞書・参考書で例文が見事に重ならないんですね。
 これって偶然なんですかね?
 
 で、「已然形+ば」は明日。も少し調べさせてください。
 
PR

芥川⑥

芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、
「かれは何ぞ」
 となむ男に問ひける。
 
 続きです。
 相変わらず進みません
 今日は「芥川といふ河を率て行きければ」だけです。
 
 さていきましょうか。
 「芥川」は、とりあえず地名。大阪府高槻市に芥川という川があります。
 高槻の位置は……そうですねぇ、大阪(梅田)と京都(河原町)とを結ぶ私鉄に「阪急電鉄(京都線)」というのがあるんですが、それでいえば、ちょうど真ん中ぐらいといっていいんじゃないですかねぇ。
 高槻と京都とは結構な距離があります。
 それと、芥川は「芥」というのが「ごみ」という意味があるので、京にあるゴミを流すための川という説もあります。
 どっちが正しいか?その考察は後で行います。次です。
 
 「芥川といふ河を率て行きければ」ですが、「河を」「率て行く」って、どういうことなんでしょうね?
 「率て行く」が「つれていく」という意味なのは、間違いないでしょう。後で「率て来し女もなし」っていうフレーズが登場しますが、この「率て」って「つれて」という意味ですから。
 じゃ「河をつれていく」って何?「河に女をつれていく」なら、わかるんですがね
 考えられるのは4パターンですかね。
 
 ①もともと、そういう用例があった(私が知らないだけ)。
 ②「伊勢物語」成立時にいい間違えた、あるいは書き間違えた(成立時のミス)。
 ③どこかで誤写があった(伝承中のミス)。
 ④その他(上記の複合技とか……なんだろう?)
 
 どれでしょうかね……。ま、いいや。こっからさきは、専門の研究者にお任せです。
 ここでは、どっかでミスったんだろうね、ということで「河に女をつれていく」の誤りぐらいにしときます(笑)。
 次です。
 「ば」が出て来てますね〜。
 これは腰を据えてかからないといけません。
 明日にまわします。
 
 今日はここまで。
 
 
 

芥川⑤

 理屈は進んだのに、内容が全くすすみません(苦笑)。
 ご了解ください。
 
 むかし、男ありけり。女の、え得(う)まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、辛うじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、
「かれは何ぞ」
 となむ男に問ひける。
 
 話がややこしくなったのは、そもそも「女の、え得(う)まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを」というフレーズのせいでした。しかし、その問題もようやく片付き、
  
 手に入りそうにない女を、(そして)長年、求婚し続けていた(その女)を、盗み……
 
とすることとなりました。やれやれ。
 次です。
 
 「辛うじて」は、「かろうじて」で、現代語にもあるので省略。
 「盗み出でて」は「盗み出す」とも訳せますし、「盗んで出てきた」とも訳せます。「出づ(いづ)」が他動詞「出す」でもあれば、自動詞「出る」でもあるためで、この場合はどっちでもよろしい。
 訳本を見る限りでは、「盗み出す」の方が多いようです。
 おそらく、「女を」という目的語があるため「盗み」は他動詞、「出づ」は「盗み」と連続して一句となっていますので、同じく他動詞と解釈されているのでしょうね。
 私も、「盗み出す」の方がいいと思います(「女を盗んで出て来た」と訳すのも悪くないとは思いますが)。
 「いと暗きに来けり」は「暗き」が問題。形容詞「暗し」の連体形で「暗い〜」の意ですが、暗い何なんでしょう?考えられるのは、「暗い時間に」か「暗い所に」か、どちらかでしょうね。さてどっち?
 この問題を考える上で、筑摩が面白いヒントを与えてくれています。
 
 「月も星もない闇夜である。男はこの暗さに乗じてひた走るのだが、闇夜は鬼の出現の条件でもある。」
 
 なるほど、この「暗き」は「鬼」出現のための伏線だった、というわけですね。この指摘は面白いですね。
 この指摘を受けて「暗き」を考えてみると、要するに「暗き」とは「闇」を示しているのであって、「闇」を示すんなら「暗い時間(=闇夜)」でも「暗い所(=闇夜の空間)」でもあんまり関係ない、となりますね(電灯がない平安時代、「闇夜」はどこもかしこも「まっくら」ですから)。
 じゃ、「暗き」は「闇夜」でいきましょう。
 「来けり」は冷静に考えれば、何かへん。女を盗み出して、「やってきた」って、どこに?普通は女を盗み出して「行ってしまった」じゃないの?
 次の文には「芥川といふ河を率て行きければ」とあり、男のやってきた場所が「芥川」と明示されています。
 でもこれもなんかヘン。なんで、このタイミングで「芥川」なの?
 現代人として考えてみると、普通、「かろうじて盗み出して、深い闇夜の中を芥川までやってきた」となるんじゃないのかな?
 そう思いません?
 この辺の細かい矛盾が、古文のやな所でもあり、面白いところでもあるんですよね(苦笑)。
 
 さてさて、ではこれはどうしましょうか?
 私は、「来けり」は物語の舞台にやってきたんだろうな、と半ば自暴自棄的に解釈しています。
 役者が舞台に登場してくるイメージ?
 「男がやってきてみると、そこは芥川であった」って感じ?
 言い方が、なんかぐちゃぐちゃになってる。そう考えてることにしました(いいのか……(笑))。
 
 →深い闇夜の中をやってきた。
 
 とりあえず、こうしときます。

芥川④(ふたたび同格)

なかなか進みませんが、そんなものと思ってください。
まだまだしつこく考えます。
 
 むかし、男ありけり。女の、え得(う)まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、辛うじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、
「かれは何ぞ」
 となむ男に問ひける。
 
 今日、問題としたいのは、「年を経てよばひわたりけるを」の処理、この一点のみです。
 
 これのどこが問題なのかというと、ここ、そのままでは本文中にすんなりとは収まってくれないんです。
 やってみましょう。
 
 女の、え得まじかりけるを→手に入れることができそうにもない女を
 年を経てよばひわたりけるを→長年、求婚しつづけていた……?
 
 そうなんです。この「を」が訳せないんです。
 前半部の訳にある「女を」は「盗み」に関係します。英語でいうところの、V+Oですね。じゃ、次にでてくる「を」は何?
 
   年を経てよばひわたりけるを……?
 
 やはり「盗み」の目的語であることを示す「を」でしょう。
 とすれば、この「を」を生かすとすれば、こうなりますね。
 
   長年、求婚しつづけていた(その女)を〔盗み出でて……〕
 
 (その女)を追加しなきゃいけない。そうすれば、すっきりする。でもそれっていいんでしょうか?

 
 私はこの場合、(その女)を追加してもいい、あるいは追加しなければいけない、と考えています。
 理由は同格の考え方にあります。
 
 私は同格を「修飾ー被修飾の順番がひっくり返っている表現技法」と考えています。
 ですから、同格の処理は、
 
 「被修飾ー修飾」→「修飾ー被修飾」 
 
となります(芥川②で説明したました)。
 
 では、同格の修飾語部分が2つあったとすれば、どうでしょう。
 
 女の(え得まじかりける)+(年を経てよばひわたりける)を 
   →女のえ得まじかりけり、年を経てよばひわたりけるを
 
 強引にくっつけてみました(笑)。
 これなら単なる同格として、何の問題もありません。これならば、です。

 
 でも、やはり修飾語が後にくる構造って、不自然なんです。
 不自然なことをやっているんだから、そんなにきれいに、うまくいくはずがありません。
  
 そのため、こうなった。
 
  →女の、え得まじかりけるを、(そしてその「女の」)年を経てよばひわたりけるを
 
 で、括弧の部分は省略される(同じ「女の」だから)。
 
  →女の、え得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを
 
 こうして、この不自然な表現は出来上がったのではないでしょうか。
 苦しいですが、これなら辻褄はあうと思います。
 
 以上はもちろん仮説です(芥川のこのフレーズだけで考えました)。
 私のように考えるには、次の2点がポイントになります。
 
  ①同格は、修飾ー被修飾がひっくり返った、不自然な表現である
  ②共通の被修飾語を持つ場合、後のフレーズで被修飾語が省略されることがある
 
 ややこしいですね。
 
 以上に従い訳しておくと、こうなります。
 
①手に入りそうにない女を、(そして)長年、求婚し続けていた(その女)を、盗み……
 →私はこれがいいと思っています
 
②手に入りそうにない(けれど)長年、求婚し続けていた女を、盗み……
 →修飾語をひとまとめにしてみました。これはこれで悪くはないかもしれないですが、原文の「〜を〜を」の部分がうまく訳せていません。
 
③女で手に入りそうにないのを、(そして)長年、求婚し続けていた(その女)を、盗み……
 →教科書にいわれている「で」を使って訳してみました。わかりにくいとおもうんだけどなぁ。
 
 以上、訳しておきましたが、難点がひとつ。それはどの訳にせよ括弧がどうしてもついてしまう、ということです。原文が不自然なんだから、ある程度はしょうがないと思っていますが、先生によって解釈がブレル(括弧の使用に関して、あるいは同格の訳し方に関して)場合がありますので、試験に使う場合は事前に担当の先生に尋ねておいてください。
 なお、受験の時は、括弧はアリ、同格の訳し方は③でやるのが無難でしょう。
 
***************************************
参考までに、いろんな先生方の訳を引用しておきます。
 
自分のものにできそうにもなかった女を、幾年も求婚し続けてきたのだが、やっとのことで盗み出して、
(筑摩の教員用ガイドブック)
 
女で手に入れることができなかった人を、数年にわたって求婚しつづけていたが、何とか盗み出して、
(内田美由紀)
 
わがものにすることができるはずもなかった女を、何年にもわたって求め続けていたのであったが、やっとのことで盗み出して(片桐洋一)
 
とうてい自分のものにはなれないと思われた女のところに、幾年も通って口説きつづけてきたが、ある晩、ようやく女を盗み出して、(中村真一郎)
 
それぞれの特徴が現れていて、面白いと思います(コメントは省略)。
では、今日はここまで。
 
※参考文献は、後日まとめて提示します
  

芥川③

やっと内容にとりかかります。 

 むかし、男ありけり。女の、え得(う)まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、辛うじて盗み出でて、いと暗きに来けり。
 
 
 「むかし、男ありけり」は、既にお話しました。ここから物語が始まります。
 「女の、え得まじかりけるを」も、①「え〜ず」②同格がポイントといいました。
 次です。
 「年を経てよばひわたりけるを」について。「年を経て」とは「年」はそのまま「年月」のこと、「」とは「経過する」ことです。
 「よばひ」とは原形は「よばふ」、「よば」+「」で成立している語です。
 「よば」は「呼ぶ」の意、「ふ」は反復・継続をあらわすとのことですので(上代では助動詞だったとのことです)、本来は「呼びつづける」の意だったんですね(以上べネッセ「全訳古語辞典」)。
 それが、おそらく「誰を呼びつづけるの?」というところあたりから、転化していったのでしょう。好きな女性を呼び続けるということで、「求婚する」の意になったんじゃないでしょうか(と私は考えてます)。ベネッセによれば「求婚する」の場合は「婚ふ」と書くこともあるそうです。そのまんまですね。
 「わたる」は「広く空間的・時間的に移動する」が原義のようです。それが補助動詞になり「〜しつづける」の意味になったそうです(ベネッセ)。
 あれ?「よばふ」の「ふ」は「〜しつづける」の意、「わたる」も「〜しつづける」の意なら、「〜しつづける」が2つあることになっちゃうんじゃないの?
 そう、たぶんそのとおりでしょうね。
 ただ、それは結果的にそうなっただけであって、上代を過ぎて「よばふ」の「ふ」が意味不明になっていたから、あらためて「わたる」がついたんでしょうね。つまり、作者は「ふ」に「〜しつづける」という意味があるなんて、思っちゃいない、だから作者にとって「〜しつづける」はひとつしかない、ということになるんでしょうね。
 
 以上から「年を経てよばひわたりける」は、「時間が経過して求婚し続けてていた」となります。
 意味がわかりませんね。じゃ、前後の確認。
 「手に入りそうにもない女」がいたわけです。「時間が経過」しました。「求婚し続け」ました。
 邪魔臭いの、どれでしょうか。
 「時間が経過」ですね。「手に入りそうにもない女」がいて、その女に「求婚し続けた」のならば、何の問題もありませんから。わかんないのは、「時間が経過」して「求婚し続ける」って、どういうこと?ってことです。
 これ、「長年」「求婚し続けた」ということなんです。逆にすれば、わかりやすいんですよね。すなわち
 
「時間が経過して、求婚し続けた」
=「求婚し続けているうちに、時間が経過していった」
=「長年求婚し続けた
 
 まぁ、多少無理があるのは承知ですがね(笑)、できるだけ原文を生かそうとすれば、こうするのが一番かな、と思います。
 もともと、あんまり深く考えて書かれたわけじゃないんでしょうね。
 だって、娯楽のための物語なんですから。
 
 だからってわけじゃありませんが、次の「を」の解釈も苦しいわけです。
 
 女の、え得(う)まじかりける、年を経てよばひわたりける、辛うじて盗み出でて、
 
 この「よばひわたりけるを」の「を」って何?
 「盗み出でて」の目的語ってこと?
 あれれ……?
 
 何が「あれれ」か、わかります?
 
 このへんのことは、また明日。
 今日はここまで。 
 

カレンダー

03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

フリーエリア

最新コメント

プロフィール

HN:
今日国庵主人
性別:
非公開

バーコード

ブログ内検索

P R