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今日の国語

シンプルに

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芥川④(ふたたび同格)

なかなか進みませんが、そんなものと思ってください。
まだまだしつこく考えます。
 
 むかし、男ありけり。女の、え得(う)まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、辛うじて盗み出でて、いと暗きに来けり。芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、
「かれは何ぞ」
 となむ男に問ひける。
 
 今日、問題としたいのは、「年を経てよばひわたりけるを」の処理、この一点のみです。
 
 これのどこが問題なのかというと、ここ、そのままでは本文中にすんなりとは収まってくれないんです。
 やってみましょう。
 
 女の、え得まじかりけるを→手に入れることができそうにもない女を
 年を経てよばひわたりけるを→長年、求婚しつづけていた……?
 
 そうなんです。この「を」が訳せないんです。
 前半部の訳にある「女を」は「盗み」に関係します。英語でいうところの、V+Oですね。じゃ、次にでてくる「を」は何?
 
   年を経てよばひわたりけるを……?
 
 やはり「盗み」の目的語であることを示す「を」でしょう。
 とすれば、この「を」を生かすとすれば、こうなりますね。
 
   長年、求婚しつづけていた(その女)を〔盗み出でて……〕
 
 (その女)を追加しなきゃいけない。そうすれば、すっきりする。でもそれっていいんでしょうか?

 
 私はこの場合、(その女)を追加してもいい、あるいは追加しなければいけない、と考えています。
 理由は同格の考え方にあります。
 
 私は同格を「修飾ー被修飾の順番がひっくり返っている表現技法」と考えています。
 ですから、同格の処理は、
 
 「被修飾ー修飾」→「修飾ー被修飾」 
 
となります(芥川②で説明したました)。
 
 では、同格の修飾語部分が2つあったとすれば、どうでしょう。
 
 女の(え得まじかりける)+(年を経てよばひわたりける)を 
   →女のえ得まじかりけり、年を経てよばひわたりけるを
 
 強引にくっつけてみました(笑)。
 これなら単なる同格として、何の問題もありません。これならば、です。

 
 でも、やはり修飾語が後にくる構造って、不自然なんです。
 不自然なことをやっているんだから、そんなにきれいに、うまくいくはずがありません。
  
 そのため、こうなった。
 
  →女の、え得まじかりけるを、(そしてその「女の」)年を経てよばひわたりけるを
 
 で、括弧の部分は省略される(同じ「女の」だから)。
 
  →女の、え得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを
 
 こうして、この不自然な表現は出来上がったのではないでしょうか。
 苦しいですが、これなら辻褄はあうと思います。
 
 以上はもちろん仮説です(芥川のこのフレーズだけで考えました)。
 私のように考えるには、次の2点がポイントになります。
 
  ①同格は、修飾ー被修飾がひっくり返った、不自然な表現である
  ②共通の被修飾語を持つ場合、後のフレーズで被修飾語が省略されることがある
 
 ややこしいですね。
 
 以上に従い訳しておくと、こうなります。
 
①手に入りそうにない女を、(そして)長年、求婚し続けていた(その女)を、盗み……
 →私はこれがいいと思っています
 
②手に入りそうにない(けれど)長年、求婚し続けていた女を、盗み……
 →修飾語をひとまとめにしてみました。これはこれで悪くはないかもしれないですが、原文の「〜を〜を」の部分がうまく訳せていません。
 
③女で手に入りそうにないのを、(そして)長年、求婚し続けていた(その女)を、盗み……
 →教科書にいわれている「で」を使って訳してみました。わかりにくいとおもうんだけどなぁ。
 
 以上、訳しておきましたが、難点がひとつ。それはどの訳にせよ括弧がどうしてもついてしまう、ということです。原文が不自然なんだから、ある程度はしょうがないと思っていますが、先生によって解釈がブレル(括弧の使用に関して、あるいは同格の訳し方に関して)場合がありますので、試験に使う場合は事前に担当の先生に尋ねておいてください。
 なお、受験の時は、括弧はアリ、同格の訳し方は③でやるのが無難でしょう。
 
***************************************
参考までに、いろんな先生方の訳を引用しておきます。
 
自分のものにできそうにもなかった女を、幾年も求婚し続けてきたのだが、やっとのことで盗み出して、
(筑摩の教員用ガイドブック)
 
女で手に入れることができなかった人を、数年にわたって求婚しつづけていたが、何とか盗み出して、
(内田美由紀)
 
わがものにすることができるはずもなかった女を、何年にもわたって求め続けていたのであったが、やっとのことで盗み出して(片桐洋一)
 
とうてい自分のものにはなれないと思われた女のところに、幾年も通って口説きつづけてきたが、ある晩、ようやく女を盗み出して、(中村真一郎)
 
それぞれの特徴が現れていて、面白いと思います(コメントは省略)。
では、今日はここまで。
 
※参考文献は、後日まとめて提示します
  
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芥川③

やっと内容にとりかかります。 

 むかし、男ありけり。女の、え得(う)まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、辛うじて盗み出でて、いと暗きに来けり。
 
 
 「むかし、男ありけり」は、既にお話しました。ここから物語が始まります。
 「女の、え得まじかりけるを」も、①「え〜ず」②同格がポイントといいました。
 次です。
 「年を経てよばひわたりけるを」について。「年を経て」とは「年」はそのまま「年月」のこと、「」とは「経過する」ことです。
 「よばひ」とは原形は「よばふ」、「よば」+「」で成立している語です。
 「よば」は「呼ぶ」の意、「ふ」は反復・継続をあらわすとのことですので(上代では助動詞だったとのことです)、本来は「呼びつづける」の意だったんですね(以上べネッセ「全訳古語辞典」)。
 それが、おそらく「誰を呼びつづけるの?」というところあたりから、転化していったのでしょう。好きな女性を呼び続けるということで、「求婚する」の意になったんじゃないでしょうか(と私は考えてます)。ベネッセによれば「求婚する」の場合は「婚ふ」と書くこともあるそうです。そのまんまですね。
 「わたる」は「広く空間的・時間的に移動する」が原義のようです。それが補助動詞になり「〜しつづける」の意味になったそうです(ベネッセ)。
 あれ?「よばふ」の「ふ」は「〜しつづける」の意、「わたる」も「〜しつづける」の意なら、「〜しつづける」が2つあることになっちゃうんじゃないの?
 そう、たぶんそのとおりでしょうね。
 ただ、それは結果的にそうなっただけであって、上代を過ぎて「よばふ」の「ふ」が意味不明になっていたから、あらためて「わたる」がついたんでしょうね。つまり、作者は「ふ」に「〜しつづける」という意味があるなんて、思っちゃいない、だから作者にとって「〜しつづける」はひとつしかない、ということになるんでしょうね。
 
 以上から「年を経てよばひわたりける」は、「時間が経過して求婚し続けてていた」となります。
 意味がわかりませんね。じゃ、前後の確認。
 「手に入りそうにもない女」がいたわけです。「時間が経過」しました。「求婚し続け」ました。
 邪魔臭いの、どれでしょうか。
 「時間が経過」ですね。「手に入りそうにもない女」がいて、その女に「求婚し続けた」のならば、何の問題もありませんから。わかんないのは、「時間が経過」して「求婚し続ける」って、どういうこと?ってことです。
 これ、「長年」「求婚し続けた」ということなんです。逆にすれば、わかりやすいんですよね。すなわち
 
「時間が経過して、求婚し続けた」
=「求婚し続けているうちに、時間が経過していった」
=「長年求婚し続けた
 
 まぁ、多少無理があるのは承知ですがね(笑)、できるだけ原文を生かそうとすれば、こうするのが一番かな、と思います。
 もともと、あんまり深く考えて書かれたわけじゃないんでしょうね。
 だって、娯楽のための物語なんですから。
 
 だからってわけじゃありませんが、次の「を」の解釈も苦しいわけです。
 
 女の、え得(う)まじかりける、年を経てよばひわたりける、辛うじて盗み出でて、
 
 この「よばひわたりけるを」の「を」って何?
 「盗み出でて」の目的語ってこと?
 あれれ……?
 
 何が「あれれ」か、わかります?
 
 このへんのことは、また明日。
 今日はここまで。 
 

芥川②(え〜ず、同格)

今日は文法です

 

女のえ得(う)まじかりけるを、

ポイントは2つ。どちらも絶対必要です

 

①「え~ず」……不可能を表します。今回は「ず」のかわりに「まじ」が使用されています。「まじ」は打消推量と考え、「手に入れることができそうにもない」ぐらいで考えておきましょう。

〔参考〕

・子は京に宮仕えしければ、詣(まう)づとしけれど、しばしば詣で(伊勢84)

(訳)子は京都で宮仕えをしていたので(母のいる長岡に)参上しようとしたけれど、たびたびはとても(公用が忙しくて)参上することができない

・「ただし、この玉、たはやすく取らを、いはむや竜(たつ)の頸(くび)に玉はいかが取らむ」(竹取 竜の頸の玉)

(訳)しかしながら、この(五色に光る)玉を、容易にはとても取ることはできないだろうに、まして、竜の首に(あるその)玉はどうして取ることができるのだろうか、いや取る事ができないだろう

以上「ベネッセ全訳古語辞典」

・人のそしりをも、はばからせ給は

(訳)(桐壺帝は)人々の非難をも気がねすることがおできにならないで

以上 旺文社「全訳古語辞典」

 

 

②同格……日本語では、修飾と被修飾は必ず「修飾ー被修飾」の順番に置かれます。「きれいな花」は問題なしですが、「花きれいな」は日本語としてヘン。整理してみましょう。 

 

 A「きれいな花」……これ、別に問題ない。

 B「花きれいな」……花がどうしたの?きれいな何?ということで問題あり。日本語としてダメ

 C「花のきれいな」……花があって、それがきれいで、きれいな何?それがどうしたの?

 

 Aは現代文でも古文でも通用するスタンダードな形式

 Bは現代文でも古文でもダメ、通用しない形式

 Cは現代文ではダメだけど、古文ではOKの形式……これが同格です

 

 同格とは、「修飾ー被修飾」の順番が「被修飾ー修飾」の順番にひっくり返っていて、被修飾語と修飾語との間に「の」が置かれている現象のことなんです。古文を読んでいると、ちょくちょく登場します。

 処理の仕方は「被修飾ー修飾」が、そもそもの問題なんだから、これをあるべき姿にもどしてやればいい。「被修飾ー修飾」→「修飾ー被修飾」ですね。もちろん、同格の「の」は除去します。

 

「女のえ得まじかりけるを」→「え得まじかりける女を」 

 

 ね、これだけ。わかってしまえば簡単です。

 


 でも、試験(記述式)では現代語訳するときに「修飾ー被修飾」の順に並べ替えて訳することは、どうしてだか知りませんが、しないんです(こっちの方がシンプルなのに)。

 じゃ、どう訳すのか。「で」を使います。

 

「女のえ得まじかりけるを」→「女手に入りそうにないのを」

 

 これでも悪くはないんでしょうけどねぇ……。 
 言葉の順序を変えたくないんでしょうが、後半部(入りそうにない
のを)が苦しいですねぇ。

 「女で手に入りそうにない女を」としてみても、今度は「女(被修飾語)」が2度繰り返されることになりますしねぇ……。

 「女で手に入りそうにない人を」というのは、「人」なんて言葉をあらためて持ってくるのも、逆に面倒くさいとおもうのですがねぇ……。

 なぜか、「被修飾ー修飾」→「修飾ー被修飾」にしないんです。
 すればいいのに、と思うのですが、やらない……。
 みなさんは、どう思います?

 

 現在のところ、私は記述問題に出題された時は頑張って「で」を使って処理してね、
 でも単に読んでいるだけ、とか、試験問題になっていない、などといった場合には、修飾語を〔〕でも使いながらひっくり返したほうが早いよ、と説明してます。

 

〔参考〕
 参考書を確認してみましょう。

 

・いと清げなる僧の、黄なる袈裟着たるが来て(更級日記)

 →たいそうさっぱりした感じの僧で、黄色い地の袈裟を着た僧が来て

以上  数研出版「体系古典文法」7訂版

 

 

・継母なりし人は、宮仕えせしが下りしなれば(更級日記)

 →継母で合った人は、宮仕えをした人で、(一緒に)下った人であるので

・雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるはいとをかし(枕草子1)

 →雁などで列をなしているの(雁など)が、たいそう小さく見えるのは、たいそう興趣深い。

以上 尚文出版「これからの古典文法」


※尚文出版さんは、「同格の訳し方」としてまとめてくれてますので、引用します。

 

(1)「が」〔同格の「が」というのもあります〕または「の」を「~デ」と訳す

(2)上記④〔継母の例文です〕のように連体形についている時は、必ず体言を補って訳す。(「宮仕えしたで」)

(3)同格の対象になる部分の連体形の下には、同格の「が」「の」の上にある体言を補って訳す。

 ④〔継母の例文〕=下ったであるので

 ⑤〔雁の例文〕=列をなしている雁など

 

以上、引用でした(〔〕内部は、私が補いました)。

 

 やっぱり「~で」を使って訳さなきゃいけないんですかね……。

 そっちのほうが面倒くさいし、不格好と思うんですが……。

 

もう少し調べてみましょう

 

・精進物の、いと悪しきを打ち食ひ……(枕草子7)

 →(僧は)肉類を使わない食事、たいへん粗末なものを食べ……

・年いみじく老いたる媼の白髪白きが、その枕上にいて……(今昔物語)

 →年をひどくとった老婆であって、しかも白髪の白い女が、その死人のまくらもとにすわって……

以上 「ベネッセ全訳古語辞典」

 

 今昔は「であって」となっていますが、順番を変えていないと言う点では、「で」を使うパターンとおんなじですね。

 ベネッセは「古語ならではの同格」というコーナーを設けてます。読んでみると、やっぱり「で」を使って訳す方法を採用してます。

 

 ひっくり返したほうが楽なんだけどなあ(笑)
 そっちのほうが、かっこいいと思うんだけどなぁ……。

 まぁいいや

 もし、使えると思ったら、使ってやってください。

芥川①(昔、男ありけり)

昔、男ありけり。
 伊勢物語の典型的な始まり方ですね。
 伊勢物語は「在原業平」という人の人生を描いた物語とされており、そのため、ここにいう「男」とは業平のこととされています。でも楽しむだけなら別にそんなこと、こだわんなくてもいいかなぁっても思ってしまいます。だって、在原業平って、誰だか知りませんもん。
 そりゃ、調べればある程度はわかりますよ。でも、それがわかったところで何なんでしょう?
 物語がもっと面白くなる?確かになるかもしれないけど、それ、歴史のお勉強として面白くなるってことでしょ。読み物として面白くなるわけじゃないですよね。物語世界が歴史世界と連結するだけのこと。
 だから、男が業平かどうかってこと、どうでもいい。大切なのは物語として面白いかどうかってこと。(参考にはしますがね、男=業平で固定させてしまったら、面白くないってこと)

 案外、伊勢物語が「昔、男ありけり」で始まるのは、その辺が理由だったんじゃないですかね。物語世界は物語世界だけで成立させようとする。歴史にまとわりつかれるのはイヤ!! こんなところかなって思います。
 
 それにねぇ、「昔、在原業平というものありけり」じゃね……。これじゃ人物伝ですよ。実際の人物を持ち出してくるって、野暮ったいですやね。

芥川から始めましょう

伊勢物語という書物に「芥川」というお話があります

ある男が貴族のお嬢さんをさらって逃げました
二人は相思相愛だったんでしょうかね?
どうやってさらったのかはわかりませんが、
男は必死で逃げました
そして、京の都から数十キロ離れた芥川というところまでやってきました

お嬢さんは呑気なもんです
露を見て、「あれは何?」と尋ねる始末……

真っ暗な夜に雨まで降って来て、
困った男はうち捨てられた蔵をみつけました
そこにお嬢さんを入れて、自分は入り口で見張り番
必死でお嬢さんを守りました
朝が来るのを願いました

そして朝になりました
中にお嬢さんはいませんでした
鬼に食われたのです
鬼は中にいたのです

お嬢さんが「あれは何?白玉なの?」って聞いたとき、
「露ですよ」って答えて、自分も露のように消えてしまえればどんなによかったことか……

男は死ぬほど悲しみました

ストーリーはこんなとこです
明日は原文を見ながら、説明していきましょう

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